いらない。




「ん、ぁ・・・ゃ・・・ッ!!」


ぺちゃ、と生ぬるい舌が紅い傷口を這う。


(なんで、こんな、ことに・・・・・。)



時は放課後。
空は昼と夜が混ざり、鮮やかなグラデーションを創りだしている。
綱吉がココ、応接室に来たのは、1時間程前だ。


授業も終わり、教室を出ようとすると、校内に自分の名前が響き渡る。


呼び出された。


あの人に。


行かないわけにはいかない。


行かなければ後でどうなるか・・。


綱吉は一緒にいた獄寺に先に帰るように促すと、応接室に足を向けた。


(今日は、何も、してないんだけど・・・。)



綱吉はそんなコトを考えながら、“応接室”と書かれた部屋の前で立ち止まった。

(はぁ〜・・・。やっぱり怖い・・・。)


ココに呼ばれるのは初めてではないが、怖いものは怖い。
植えつけられた恐怖心はそう簡単に消えるものではない。
しかし、ここで悩んでも仕方ないので(あまり遅いとまた何か言われそうだ。)覚悟を決めてドアをノックした。
コンコンと2回ノックしてすぐ、「入りなよ。」と部屋からの声。
綱吉はそろ、・・・と部屋に入る。

「し、失礼します・・・・。」

「遅かったんじゃない??授業終わって、10分も経ってるんだけど。」

目の前には風紀委員長でありながら不良の頂点である雲雀恭弥がソファに座っていた。
ギラリと光るその眼に言われてしまえば、もう何も言えない。(言えるわけがないのだが。)

「すすすすすすみませんッッ!!」
(ヒィィ!!怖いーーッ!!)

「もう いいよ、その辺、座れば?」

雲雀は綱吉にソファに座るように促すと、自分は席を立つ。

「は、はぃ・・・・。」

綱吉はびくびくと怯えた足で、ちょこんとソファに腰を下ろした。

(な、なんで呼ばれたんだろう・・・・、俺。)

そんなことを聞けるわけもなく、ただ黙って俯いていると、目の前のテーブルにカチャリと何かが置かれた。

(・・・?)

顔を上げれば、高そうなショートケーキと、またも高そうなカップに入った紅茶。

「え・・・?」

「食べなよ。」

「え、でも・・・。」

「食べないの?」

雲雀は綱吉の向かいにあるソファに腰を下ろし、自分用であろうカップの紅茶を一口、口に含む。

「・・・・・い、いただきます。」

食べないわけにはいかない。
綱吉はそう思い、銀色に輝くフォークを手に取った。

(ケーキ嫌いじゃない、し、別に、いいんだけど、・・・・。)

ケーキを食べながら、ちらりと雲雀の方を見れば、
じっとこっちを見てるのがわかる。

(何なんだこの人―――!!一体何がしたいんだよ――ッッ!!)



「ねぇ。」

「ははははいッッ!!」

綱吉はびくっと身体を反応させ、雲雀の方を見る。

「手、どうしたの。」

雲雀は綱吉の左手の甲にある紅い擦り傷を見る。

「あ、これは・・・・、その、・・・朝、・・け、ケンカに巻き込まれちゃって・・。(ランボとイーピンの、だけど・・・。)」

綱吉はサッと手を引っ込める。



「・・・・・気に入らないね。」

「え?」

雲雀はすくっと立ち上がると、綱吉の隣に座る。

「え、えぇ?あ、あの??」

「・・・・・・・・気に入らない。」

ドサッと音がしてから、しばらく何が起きたかわからなかった。
背中と頭にあるのは革張りのソファの感触。



押し倒され、た・・・・?





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