欲しいモノ
「何が欲しいの?」
「……はぃ??」
並盛中学校・応接室。綱吉は数学の補習が終了後、応接室に来いといつものように雲雀に呼び出されていた。
19時が過ぎた頃だろうか、窓からは深い夜の闇と月明かりが差し込んでいる。
「だから……明日何が欲しいのって聞いてるんだけど。」
ソファに座っている綱吉は可愛らしく小首をかしげている。
「明日って………?」
「綱吉の誕生日でしょ。」
雲雀は2人分の紅茶を持ってくると、ソファに、綱吉の横に座る。
「あ、すみません……。」
綱吉は紅茶を受け取ると、自分の前にあるテーブルに置く。
「僕の中ではもう君に渡すものは決まってるんだけどね。」
(決まってるんだ・・・・・・。)
「一応君の意見も聞いておこうと思って。」
「はぁ……。」
雲雀は紅茶を一口含むとカップをテーブルに置く。
「で、何が欲しいの?」
「えっ……。」
(そんなこと、言われても……。)
綱吉は欲しいものを脳内を張り巡らして探す。
「ない、ですね…。」
綱吉はへらっと笑う。
「……………ないの?」
雲雀は少し驚いたように目を見張る。
「……………は……い。」
ないのだ何も。
「……本当に?」
雲雀は綱吉の顔を覗きこむ。
(うっ……どうしよう何か、言ったほうがいいのかな……。)
「本当にないわけ。」
雲雀から少し苛立ちのオーラを感じる。
(……あぅ……何か、言わなくちゃ………あっ。)
「……あっあの……。」
「…………何?」
「……あの、……できたら、でいいんですけど……。」
「……できるから、早く言いなよ。」
(どこからくるんだその自信………!!!)
「……その、明日、……は……できるだけ……長い時間、雲雀さんと、いられたらなぁ………って。」
綱吉は照れを隠すようにあははと笑う。
(………アレ?)
雲雀からの反応を待っていたがそれがない。
「雲雀さん………?」
固まってしまったように動かない雲雀を今度は綱吉が覗きこむ。
「綱吉……!!」
「え、うわ……!!」
どさりとソファに押し倒される。
この時の衝撃も、ソファの感触も、もう慣れてしまった。
「……ひ、雲雀さん……どうかしたんですか……?」
「ねぇ綱吉。」
ズィっと雲雀は綱吉に近づく。雲雀の前髪が綱吉の額に触れる。
「なっ……何ですか………?」
「それは綱吉が僕を欲しいってことで解釈していいの?」
「えぇっ!!??」
「違うの。」
「えぇ!?あの、……そのっ……。」
質問の元をたどればそうかもしれない。 そうかもしれないけど……。
そんな大胆な発言したつもりじゃなかったのに。
でも結果はそうなってしまった。
「どうなの。」
「あ、……ぅ………違わない、…です。」
綱吉は真っ赤になりながら返事をする。
「ねぇ。今日は確か赤ん坊の誕生日だったよね…。」
「……?は、……い。」
「……じゃぁ赤ん坊には僕が言っておいてあげるよ。」
「………はぃ?」
「あぁ、もちろんお母様にもね。」
(おっお母様ぁッ!!??)
「携帯は。」
雲雀は綱吉の上から退くと綱吉の鞄を漁り、自らが贈った携帯電話を探す。
「え、あ…。」
綱吉が答える前に雲雀は携帯を見つけ、電話をかけ始めていた。
(えっえぇっ!!??)
綱吉は何が何だかわからず混乱している。
「話はつけておいたから。」
雲雀はそう言うと携帯の電源を切り、綱吉の鞄に戻した。
再び綱吉の上に覆いかぶさる。
「えっ!?えっ!?ひ雲雀さん……!?」
「……帰さないよ。」
「えっ?」
「あんなこと言われて帰せるわけないでしょ。」
「雲雀さ……っ」
「少し早いけど、僕をあげるよ。あぁ、もちろん明日もね。」
「ひっひば………んぅっ。」
プレゼントに、溺れた。
(んっ……ん………?)
目蓋をゆっくりと開ければ向かい側にあるソファで本を読んでいる雲雀が見えた。
「起きたの綱吉。」
「ぅ……はぃ……おはよう、ございます………。」
綱吉は目を擦りながらソファから起き上がると自分の身なり(雲雀のシャツのみを羽織った格好)を見て、
自分が何をしていたかを思い出した。
(うわっ……俺っ)
かあぁっと顔が赤くなるのがわかった。
綱吉は自分にかけられていたブランケットを手繰り寄せ、自分の肌を隠す。
「隠さくてもいいのに。」
「えっ……あ。」
いつの間に移動したのか雲雀は綱吉の横に座っていた。
「…日付が変わるまでに起きてくれてよかったよ。」
「え……。」
時計を見ればあと少しで14日だ。
「キミを一番に祝うのは僕だからね。」
「雲雀さ……ンンッ!!」
甘い甘いキスが降ってきた。
「んっ……ふっ…は、ぁ……ンぅ。」
口唇を離すと 同時にカチリと時計の針二つが重なる。
「誕生日おめでとう綱吉。」
「ふぁ………ぁ、ありがとう、ございます……。」
「それからこれも。」
「??」
雲雀は綱吉の左手をとると薬指にシンプルなシルバーリングをはめる。
「……ひ、ばりさん………。」
綱吉はきょとんとした顔で雲雀を見上げる。
「僕は綱吉から先にもらったけど、綱吉には僕のモノっていう形がないからね。」
雲雀はちらりと自分の指に嵌まっている守護者の証を見る。
「……あっありがとうございますっ大切にします………っ。」
綱吉は嬉しいのか目に涙が滲んでいる。
「ねぇ綱吉。」
「はい……。」
「もう1回シようか?」
「へ?」
「もっと、僕を・・・あげるよ。」
「えっあ…………ンっ!!」
綱吉は再びプレゼントに溺れた。
END