Without going






「う゛お゛お゛ぉ゛い 帰ったぞぉ………!!」



挨拶程度のノックをするとバンッと大きくドアを開け放つ。
これでいつも守護者にうるさく言われるのだが、部屋の主は何も言わないので気にしない。
ドアを開ければいつも可愛らしい笑顔で迎えてくれるのだが、

今日はそれがない。

真正面を見れば ボンゴレファミリー10代目・沢田 綱吉は
スヤスヤと規則的な寝息を立てながら書類を下敷きに机に突っ伏していた。



「う゛お゛ぉ゛ぃ……。」



よく寝ているのかスクアーロが少し肩を揺すってみても起きる気配は全くない。
よほど疲れているのだろう。



「しょうがねぇなぁ……。」



スクアーロは仕事の報告書を机の片隅に置くと
綱吉の口元からだらしなく垂れている唾液を拭き取り、綱吉を抱き上げる。
唾液で濡れてしまったであろう書類をなるべく日の光が当たるトコロへと置いてやる。



(軽いな……。)



スクアーロは綱吉を抱き上げたまま、隣の部屋にあるボス専用の仮眠室に運ぶ。



「んっ………。」



ゴロリと一人には大きすぎるベットに綱吉を転がす。



(よく眠ってんなぁ お゛ぃ……。)



忘れていたがそういえば自分も しばらく寝ていなかったこと思い出した。
眠るために自室に帰ろうとするが天使のような寝顔が目に留まる。



「………ここまで運んだ手間賃だぜぇ。」



スクアーロはゆっくりと綱吉に顔を近付け、無防備に開いた口唇に口づける。



「んぅっ………。」



綱吉は小さく呻くとまたスヤスヤと寝息を立てる。
柔らかな口唇を堪能し終わるとスクアーロは布団をかけてやり、仮眠室を出ようと足を動かす。



ぐんっ!



「い゛っ………!!」



足を動かせば頭皮にとてつもない痛みが襲った。



「いってぇなぁ!お゛いぃ……い?」



痛みの原因を調べるために後ろを振り返れば

“後ろ髪を引かれる”

まさにその言葉と同じ状態だった。



「お゛いぃ………。」



ベットにはスクアーロの長い髪をしっかりと握り締めている綱吉の姿があった。
いつから握っていたのか分からないが、髪を引っ張り離そうとするがびくともしない。
握っている手を解こうとしても強く握り締めているのか一向に解けない。



(お゛いぃ………こいつはどうすりゃいいんだぁ………。)



スクアーロはがっくりと肩を落とす。
何も知らない綱吉は未だ夢の中だ。



(しょうがねぇなぁ……。)

こんなトコロを他の奴らに見られたら後が面倒くせぇことになるのはわかりきってるが……。



(不可抗力だぜぇ……。)



スクアーロはふかふかのベットに倒れこみ、綱吉を腕の中にしまいこむと自分も夢の中に落ちていった。





(んっ……俺、寝て、た………?あれ……?何か握ってる……?)



閉じていた手を広げればサラサラと銀色の。

(………髪!?)

顔を上げれば、目の前にスクアーロの顔。



「スク、…アーロ……!?」



綱吉は驚いて思わず身を引く。



(う、わ……なっ何でスクアーロがここに………あ。)



ストレートであった髪に自分が握っていた跡がはっきりと表れている。



(俺が……離さなかったから……。)



動けずにいたのだろう。身なりも仕事の服のままだ。



「ご、ごめん………スクアーロ。」

綱吉は自分のせいでウェーブのかかってしまった髪を申し訳なさそうに撫でる。
そして寝ているスクアーロの顔を覗き込む。ベットがギシリと音を立てる。



(よく寝てる………仕事で疲れてるんだろうな…。)



綱吉は起こさないようにゆっくりとベットから下りようとするが、ぐっと腕を強く引かれた。



「うわぁ………!!」



どさりと再びベットに沈み込む。



「なっ何なんだよっ………。」



「起きたのかぁ……。」

「スクアーロ……!!ごっごめん!起こした!?」

「いや、起きてたぜぇ…。」

「えっ そうなの?」

「そんなことより。」

「わわ……っ!すっスクアーロ!?」



スクアーロはぐっと綱吉を抱き寄せる。



「何日も寝てねぇんじゃねぇのかぁ……。」

「あ、……えっと六日くらいかな…?」

「あ゛ーもう、いい。」

「え……?」

「今日はもう寝てろ……。」

「えっ……でも………。」

「またヨダレで書類汚されたらたまんねえぜぇ……。」

「うっ………。」



またやってしまっていたのかと綱吉は肩を落とす。
家庭教師に怒られるのが目に見える。



「わかったらさっさと寝ろぉ……。」


そう言いながら綱吉の頭をポンポン叩く。


「ん………わかった。おやすみ、スクアーロ。」

「あぁ………。」



END