「恋の始まり、恋の終わり」
最近よく目にとまる。
ふわふわのキャラメル色の髪。
大きくクリクリとした丸い瞳。
弱々しい態度。
あのコの何もかもが僕の目をひく。
何故そうなるのかは僕にもわからない。
でもこれが恋愛感情ってやつなんだと最近気付いた。
悔しいけど僕は君が好きみたいだよ、沢田綱吉。
『2―A 沢田綱吉、2―A 沢田綱吉、至急応接室まで来るように。』
2時間目の授業も半分過ぎた頃だっただろうか、
授業中にもかかわらず響き渡る校内放送に生徒も教師も同様にまたか、とつぶやく。
そして呼び出された本人、沢田綱吉は全力で、それこそ死ぬ気で走る。
遅くなればどうなるかわからない。ただその一心で綱吉は足を動かす。
最近綱吉はよく応接室に呼び出される。
特に何かしたわけでなく呼び出されるので綱吉はいつも呼ばれる度に首を傾げる。
(俺………今日も何もしてない………よな??)
そう、綱吉は何も悪いことなどしていない。
理由はただ雲雀が綱吉に会いたいだけなのだ。
もちろん応接室に行っても何か罰を与えられたり、説教されたりするわけではない。
他愛のない話をしたり、雑用を手伝わされるだけだ。
そして今日も。
「あのっ………!雲雀さん……、今日は何の御用で………。」
「あぁ……そこの本棚のファイルを片付けるのに人手が足りなくってね………手伝ってくれるよね。」
「…………はい。」
綱吉が応接室に入って聞くことは毎度同じで、その度に雲雀から拒否権のない指令が下される。
今日も聞いた通りで本棚の整理だ。
「……番号順に並べてくれる?」
「あ、……はい。」
綱吉はさほど大きくもない本棚の前に立つ。
(これぐらいのだったら……一人でも片付けられるんじゃ………??)
綱吉はそう思いながら ちらりと雲雀を見れば、
いつもと変わらず椅子に座って作業をする自分を眺めるばかりだ。
別に俺がやらなくても………と言いたくなる綱吉だったが、
雲雀相手にそんなことを言えるわけがないので すぐに本棚の方を向いた。
(これが終われば帰らせてくれると思うし………。)
さっさと終わらせてしまおうと、綱吉はファイルが詰まった本棚に手をかけた――――。
「雲雀さん、……終わりました。」
「あぁ……、お疲れ様。」
時刻は3時間目が始まって少し経った頃だろうか。
静かな応接室(多少、雲雀との会話があってもそう長くは続かない)に
息苦しさを感じた綱吉だが、もくもくと1時間弱、本棚と格闘していたのだ。
(やっと………、終わった…………。)
綱吉はこれで教室に帰れると、予想以上にてこずった本棚との戦いで
覚えた疲労感を感じながらも、心は晴れやかだった。
(やっと………帰れる。)
「じゃ、じゃあ俺はこれで………。」
「待ちなよ。」
「えっ………!?」
「今から行っても中途半端でしょ、3時間目が終わるまでココに居なよ。」
雲雀の提案に綱吉はドアノブに手をかけた状態で固まってしまった。
(かっ……帰れると思ってたのに………っ!!)
綱吉は心の中で半泣きになりながら叫ぶが小さくハイ……、と返事をした。
綱吉はソファに雲雀と向かい合わせで座らされ、
何故だかわからないが雲雀からの質問に答えることになった。
綱吉の気分はまさに警察に取り調べを受けている犯人のようだ。
(……早く帰りたい………。)
「じゃあ、好きな食べ物は。」
「えっと………ハンバーグ、………です……。」
「へぇ………。」
雲雀は綱吉が答える度に手元にあるバインダーにサラサラと書き込む。
(こんなの聞いてどうするんだろう雲雀さん………。)
綱吉は疑問に思いながらも質問に答えていった。
「甘い物は好き?」
「はっ、はい………。」
「そう………。」
「何時に寝るの?」
「えっ、えっと……12時ぐらいです。」
(うぅ……早く終わらないかなぁっ………!)
雲雀が怖くて仕方ない綱吉は早く時が過ぎないかとチラリと時計を見るが、
無情にも時計の針は数分しか進んでいなかった。
チャイムが鳴ると同時に綱吉はソファから立ち上がった。
「あっあの!ちゃ、チャイム鳴ったんで……っこれで………ッ!!」
「あぁ………じゃあまた放課……」
「しっ失礼しますッ……!!」
雲雀が言い終わる前に綱吉は猛スピードで応接室から出ていった。
(放課後来いって言おうとしたのにな………。)
まぁ また呼び出せばいいかと雲雀は小さくため息をついた。
(確か・・・、甘い物好きって言ってた………。)
雲雀は思い出したように質問回答をメモしたバインダーを見た。
「草壁。」
「はい。」
「放課後までに甘い物買ってきて。」
「………わかりました。」
雲雀はそれだけ言うと山積みになっている書類を片付けだした。
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