「恋の始まり、恋の終わり」 続き3







「………君から奪った物なんてないけど?」

「そうですね、僕の物ではないのですが………。」

「………っ!?」


雲雀は骸の左手から見覚えのある物を見つけ、目を大きく見開いた。


「僕の大切な人の物を………ね。」


骸の左手にはめられているのは一週間前に綱吉から没収したブレスレットと同じ物だった。





『えっ……!えっ、ええっと………そう、…ですね………。』





ブレスレットのことを聞いた時の綱吉の表情が頭をよぎった。


あの照れた可愛らしい表情はこの男を想っていたから。


この男の事を思い出していたから。






「あぁ……、ここにありましたか……。」

「…………ッ!?」

その声に雲雀は弾かれるように振り向いた。

骸はいつのまにか雲雀の横をすりぬけ、机の中からブレスレットを取り出していた。

「……返してもらいますよ。」

骸はブレスレットを手に取り、雲雀に見せ付けるように光る黒石に口づける。

「ッッ………!!!!」

雲雀は骸に向かってトンファーを振り上げるが骸はふわりと攻撃をかわす。


「おやおや、そんなに怒らないで下さい。僕だって我慢していたんですよ?」


先程の温和な態度とは逆に骸からは殺気が溢れる。


「本当だったら僕との貴重な時間を君と過ごさせるわけないんですよ?
でも彼が自分の不注意のせいだから自分一人で頑張ると言って強く頼み込まれましてね………。」

「………っ。」

「おとなしく待っていたのですが……もう限界です。」

骸は雲雀をギロリと睨む。



「返してもらいますよ、コレも………綱吉くんも。」



骸がそう言って応接室を出ようとした、その時だった。



「………骸っ!?」


開け放たれたドアから驚いた顔を覗かせたのはさっきまで待ち焦がれた人だった。


「おや、早いんですね綱吉くん。」

「なっ…!何でココにいるんだよっ!?」

「いえね、雲雀恭弥くんにご挨拶をと思いまして。」

「ハァっ!?何言ってるんだよ!!」

わけわかんないよっ!と騒ぐ綱吉に骸は笑顔でブレスレットをはめてやる。


「!? 骸、これ………!?」

「あぁ、事情を話したら返してくれたんですよ。」

「えっ………!」

綱吉は信じられないという目で雲雀を見る。
しかし雲雀にはその眼差しに答えを返してやれる余裕はない。


ただ茫然と綱吉を見るだけだ。




「ひ、雲雀さん………?」

「綱吉くん 彼はお疲れのようですよ僕達がいてはお邪魔です、さっ帰りましょうか。」

「えっあ………。」

骸にぐいっと肩を抱かれると綱吉は骸と雲雀を交互に見るが骸に
さあ、と促されると綱吉は戸惑いながらも失礼しますと
雲雀に軽く会釈をすると骸と二人で応接室を出ていった。



応接室に一人残された雲雀は ぐるぐるとこの一週間の出来事が巡り、
がくりと床に膝をついた。





没収した時の悲しそうな顔も。


返してあげると言った時のあの嬉しそうな顔も。


反省文を書き終えた時のあの安心しきった顔も。


ケーキを食べている時の幸せそうな顔も。


雑務をこなしていた一生懸命な顔も。




全部、全部全部……あの男の為のもの。



僕が奪ったあの男と同じ物を取り戻したかったから。



僕じゃない。



僕じゃない。



僕じゃない。




綱吉の中に最初から僕なんていなかった。








これが、これがもし夢なら早く、早く覚めればいいのに。





END