「秋の大空と雲」
「今週末、空いてるよね。」
「えっ…………?」
「空いてるよね、朝10時に家の前に立ってなよ。………いなかったら咬み殺すから。」
そうやって雲雀さんが聞いてきたのは月曜日。
わざわざ俺の教室まで来て、戸惑ってる俺にそれだけ言って去っていった。
そして週末。
(家の前でたっ立ってろって言ってたけど……
えっ、俺の家……でいいんだよね……!?雲雀さんの家、知らないし………。)
不安になりながら綱吉は家の前に立って雲雀を待つ。
しばらくするとバイクのエンジン音が聞こえ、段々と音が増す。
すぐにバイクが近づいてきて沢田家の前で止まる。
乗っているのはもちろん呼び出した張本人である。
「おはよう 綱吉。」
「おっ……おはようございます……。」
(休みなのにやっぱり学ランだ………。)
「乗りなよ。」
「えっ……!?あっ……あの……??」
「後ろ。」
雲雀はちらりと自分の後ろを見やる。
「えっ……えっと……っ」
「早くしなよ。」
「わっ…!?」
雲雀はわたわたと慌てる綱吉にヘルメットを被せた。
「早くしないと咬み殺すよ。」
「はっ、ハイィィ!!」
恐る恐る雲雀の後ろに乗るがバイクは一向に走りだそうとしない。
「………ちょっと。」
「えっ……?」
「掴まってないと振り落とすよ。」
「えっ…あっ……でも………。」
どこに……?そう思った瞬間、雲雀に両腕を引っ張られ
雲雀の腰に腕を回された。自然と身体が密着する。
「うぇっ!!??あっえっ!?あの……雲雀さん!?」
「これでいいね……。じゃあ、行くよ。」
「えっ!?あのっ!どこに……うわぁあああ!!!」
大きなエンジン音を出してバイクは加速し、綱吉は自宅を後にすることとなった。
「うわぁ………。」
バイクを走らせること2時間。
綱吉は目の前にある大きな和風旅館に思わず感嘆の声を上げる。
木造の平屋建てであり、横の庭を見やれば池があり鯉が悠々と泳いでいる。
カコンっと音を響かせる鹿おどしが何とも風流だ。
旅館の周りは山しかなく、紅葉した葉達が秋らしさを演出している。
「綱吉、ボーッとしてないで行くよ。」
「あっ…はっはい!!」
綱吉はスタスタと歩いていく雲雀を追いかける。
「お待ちしておりました雲雀様。」
旅館の中に入れば、ここの従業員であるだろうたくさんの人達が
全員腰を90度近くまでも曲げて迎えてくれた。
(なっ………、なんかどっかで見た光景だ……。)
綱吉はたじろいているが、雲雀は気にせずその間を進む。
「お待ちしておりました雲雀様っ」
総支配人と書かれたネームプレートをつけた男がヘコヘコしながら雲雀に近づく。
「いつもの部屋、使うから。他のも いつも通りで。」
「はいっ承知致しました。それではコチラに……。」
「いらない。綱吉、行くよ。」
「えっ!?あっ、はいっ!!!」
雲雀は案内を断ると旅館を出ていった。
綱吉もそれに続く。
(アレ?何で旅館から出たんだろう……?)
この旅館の部屋を使うのではないのだろうか。
「ひっ……雲雀さんっ!」
旅館を出てからあまり離れていない山道(石で作られた階段)を
ずんずん進んでいく雲雀に綱吉は恐れながら問ってみた。
「……何?」
「どっどこに行くんですかっ……!?」
「どこって……今日僕と君が泊まるところだよ。」
「泊まっ……!?」
「ほら、見えてきた。」
階段の続く先にあるのは先程の旅館の一部を切り取ったかのような平屋建ての一軒家だ。
俗に言う“離れ”ってやつだ。
「こっ………ココ、なんですか?」
「そうだよ。」
僕専用の部屋なんだ、と雲雀は言うと玄関の戸をガラガラと開ける。
(部屋じゃなくて家じゃん!!)
そうツッコミかけた綱吉だが、そこは堪えて雲雀に促され中に入った。
中は外観のわりに少しこじんまりとしていて、大きな部屋が一つあるだけ。
黒く背の低い机が一つあり、床の間には生け花が小さなスポットライトで照らされている。
畳の香りがツンっと鼻をかすめ、目が冴える。
綱吉は日本情緒溢れるこの部屋にまるでココだけ世の中と隔離された空間のような錯覚に陥った。
(うわっ……、何かすごい、かも………。)
「つっ立ってないで早く入りなよ。」
「あっ、はい…。」
廊下に立っていた綱吉は雲雀に肩を抱かれ、部屋の中に入った。
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