一目惚れ。 続き1
「ねぇ 綱吉、僕の物になりなよ。」
「え・・・・・?」
耳元で囁かれたその一言に綱吉は小さく目を見張る。
「君のことが好きなんだ。僕のもとにきて欲しい。」
腕を解かれたと思えば肩に手を置かれ、まっすぐな瞳で見つめられる。
「え・・・、えっ・・・あの・・、その・・・・。」
いきなりのことに綱吉はどうしていいのか分からずしどろもどろになる。
自然と体温が上昇していくのが分かる。
雲雀の目線は一向に綱吉から外れない。
客からこのような申し出があるということは聞いていたが、
それは9割方冗談であると先輩の陰間から聞かされていた。
しかしこれは違う。
この男の目は真剣そのものだ。
「あの・・・、でも雲雀様と、俺は・・今日初めてお会いして・・その・・・。」
しばらくして何とか綱吉が言ったのはこれだけだった。
綱吉が何も言えなくなるのも当たり前である。
初対面の男に自分のところに来いと言われても、すぐにハイと言えるわけがない。
「・・・・・そうだね、ごめんね。先を急ぎすぎたみたいだ。」
雲雀は小さく微笑むとそっと綱吉の手を取る。
「雲雀様・・・?」
「綱吉、僕は君に一目惚れしてしまったみたいだ。
これから時間をかけて絶対君を僕のものにしてみせる。」
だから、君の時間を僕に頂戴、と歯の浮くような台詞を言う雲雀に
綱吉は雲雀の美しさ故か、クラクラと目眩がしそうだった。
そう 綱吉もどこかしら雲雀に惹かれていたのだった。
そしてその日から沢田綱吉は雲雀恭弥の専属となった。
次の日から雲雀は毎日あさり茶屋に通うようになった。
しかしそのような場所に出入りしているということを表沙汰にしたくない雲雀は
店へ口止め料を払い、変装と偽名を使い店に出入りしていた。
もちろん愛しい愛しい綱吉を他の誰にも触らせないように多額の金を払い、綱吉を自分のモノにした。
本当ならば雲雀が金を出して綱吉を引き取ればこのような必要はないのだが、
綱吉にはこの店で働かなければならない理由があった。
綱吉の両親は早くに亡くなり親戚の家で過ごしていたのだが、
つい先日その親戚の借金のかたとしてこの店に売られてしまった。
その借金の額は相当なもので例え裕福な身分の雲雀であってもすぐに用意できるような金額ではなく、
またこの店で借金を返し終えるまで働くという契約を結んでしまっていたのだ。
よって雲雀は毎日、綱吉のもとへ通うようになった。
「ご機嫌麗しゅう 雲雀様。」
「綱吉・・・・・、早くこっちにおいで。」
「はい・・。」
綱吉はいつものように雲雀の隣に座る。
そして当然のように腰に回される腕。
綱吉といる時の雲雀の表情は雲雀のことを知る人ならば
目を疑うほどの穏やかな表情で、いかに綱吉を溺愛しているかがわかる。
そして綱吉もその横で嬉しそうに微笑む。
他愛のない会話をしながら食事を終えると、寝床に向かう二人だが、
そこでも二人がすることは先程と同じように他愛もない会話だ。
そう雲雀はまだ綱吉を抱いていない。
雲雀の経験がないわけではなく、綱吉が嫌がっているわけでもない。
理由は、雲雀が綱吉が自分を好きになるまで手を出さないと誓ったからだ。
もちろんキスなど多少なりとの触れ合いはするが、それ以上のことはしない。
綱吉を傷つけたくないからと、どれだけ雲雀が綱吉を大事にしているかが伺える。
綱吉もそれを承知で雲雀と共にいる。
月日が経つにつれ綱吉の世界がゆっくりと雲雀で埋め尽くされようとしていた。
そう かけがえのないものへと。
そしてその様な月日が続いていたある日のこと。
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